第5回オレンジクロスシンポジウム
- 日時
- 2019年7月19日(金) 14:00~17:30
(14:00~14:45はエピソードコンテスト表彰式) - 会場
- TKPガーデンシティPREMIUM京橋
- 演者
-
座長 堀田聰子氏
(慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科 教授)後藤励氏
(慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 准教授)近藤尚己氏
(東京大学大学院 医学系研究科健康教育・社会学分野 准教授)澤登久雄氏
(社会医療法人財団 仁医会 牧田総合病院 地域ささえあいセンター センター長)長嶺由衣子氏
(東京医科歯科大学大学院 医学部付属病院 総合診療科 特任助教)三上はつせ氏
(医療法人社団 つくし会 新田クリニック 看護師長) - テーマ
- 医療だけで健康は創れるのか
-「社会的処方」の活動を手がかりに、生老病死を住民の手に取り戻そう- - 参加費
- 無料
- 定員
- 80名(先着順)
- 概要
- 健康は医師や専門職の手のなかにあるのでしょうか。昨今、人とひととのつながりや領域・世代を超えたさまざまな主体の協働を通じた、よりよく生ききることができる地域づくりが広がりつつあります。他方、医療機関等においては、健康の社会的決定要因への対応に目を向け、患者の非医療的ニーズについては地域における多様な活動やボランティア・グループなどの地域資源に橋渡しし、より患者が主体的に自立して生きていけるよう支援する取組みが始まっています。「社会的処方」と称してこうした活動を推進する英国の潮流を手がかりに、改めて健康の概念を問い直し、地域共生社会実現に向けたチャレンジを議論します。
- 社会的処方
- 社会的・情緒的・実用的なニーズを持つ人々が(時にボランタリー・コミュニティセクターによって提供されるサービスを使いながら)、自らの健康とウェルビーイングの改善につながる解決策を自ら見出すことを助けるため、家庭医や直接ケアに携わる保健医療専門職が、患者をリンクワーカー(link worker)に紹介できるようにする手段。患者はリンクワーカーとの面談を通じて、可能性を知り、個々に合う解決策をデザインする。
講演資料(講演順)
- ①資料作成者の所属
- ②資料作成者名
- ③「2019年7月19日 第5回一般財団オレンジクロスシンポジウム資料」
- 医療だけで健康は創れるのか -「社会的処方」の活動を手がかりに生老病死を地域住民の手に取り戻そう-
- 「社会的処方のエビデンス」
- 「社会的処方」の日本の医療機関における展開
- 社会的処方 -新田クリニックの現状-
-
急性期から生活期まで! 社会医療法人仁医会から見た「地域ささえあいセンターの意義」
~病院機能が、地域の健康を支える拠点であるために~ - 今、なぜ日本に社会的処方が必要か 医療福祉連携を進めよう
- [講演録]医療だけで健康は創れるのか
第1部 エピソードコンテスト表彰式
“看護・介護エピソードコンテスト” は、在宅ケアの現場で日々活躍されている方々にフォーカスし、“ 現場での思いをみなさまと共有したい”との、財団設立者の強い思いにより始まりました。
5回目となる今年も素晴らしいエピソードを多くお寄せいただき、ありがとうございました。厳正なる選考の結果、大賞1編、優秀賞3編、選考委員特別賞1編が選考されました。7月19日の表彰式には、受賞者5名のうち3名の方々が出席され、表彰後に受賞スピーチをしていただきました。欠席された方々からは事前に受賞スピーチを頂戴し代読いたしました。ここでは、その受賞スピーチをご紹介いたします。
また、今回も受賞者全員で選考委員の秋山正子さんがセンター長を務めておられる“マギーズ東京” を見学し、その後、秋山さんを囲みながら意見交換を行い、受賞者のみなさまから大変好評をいただきました。
本コンテストでは受賞者に副賞として、大賞:30万円、優秀賞:10万円、選考委員特別賞:5万円が贈呈されました。なお、受賞作品は、財団ホームページ看護・介護エピソードコンテストページに掲載しています。
選考委員特別賞
「傾聴ちょボラ」
渡辺 勇三さん
初めまして。私は、介護・看護の現場ではなく、介護老人保健施設の入所者やデイサービスの利用者の話し相手、「傾聴ボランティア」をやっています。
ボランティアを続けていたある時、施設長から、「俳句や川柳など文芸をたしなむ方が多いので俳句・川柳の“サロン”をやってほしい」という話がありまして、今では、そのグループが口コミでも広がり沢山の方が集まっています。
私自身も川柳が好きで、毎週川柳の集いを開いているのですが、私より年配の方が非常に若々しくなったり、食事の量がふえたり、笑いがふえたり、という好影響も実際にあるようです。私自身も若返ったなと感じております。
この様な活動を続けていくうちに、施設の非常勤職員というお話しもいただき、こんなにうれしいことはありません。何か1つでも自分から進んでやった結果、私自身が年配の方々からパワーをもらっているような感じです。
これからも、入所者、利用者の皆さんのために一層頑張りたいと思います。また、このようなコンテストがさらに輪を広げていくように期待しています。ありがとうございました。
優秀賞
「『対話する』ということ
そこから見える本当の願い」
古澤 奈都美さん
本日は、このような賞をいただきまして、ありがとうございます。
今、私は精神科で働いていますが、このお話しは、へき地のある総合病院で働いていたときのことです。
実際現場で働いているといろいろな患者さんがいて、対応に困ったり、悩みながらやっているのですが、このお話しの方は「終末期」にある方で、この方と直接お話しが出来なければ、ご本人の気持ちに気づかず、家に帰っていただいていて「本当に嫌だ、家に絶対に帰りたくない」という気持ちがわからなかったかもしれないこともあり、実際に話したときに、小さな気づきというところから、「患者様が、本当は何を望んでいるか?」「そこに向けてどう動けるか?」、医療者として気をつけながらやらなければいけないなと、とても感じた話です。患者さんを支える役割のご家族に対しても、悩んでいる家族への医療者としてのかかわり、家族も含め、何ができることなのか、これからも学んでいかなければいけないと思っています。
本日は、このような、栄えある式にお招きいただき、ありがとうございました。
優秀賞
「大切な『おはぎ』」
細名 優花さん
※欠席のため代読
この度は、優秀賞に選んでいただき、ありがとうございます。
現在私は、熊本の福祉の大学に通っており、テスト期間中と重なってしまったため欠席させていただきます。
受賞が決まった日、祖母や祖父に電話で伝えると、とても喜んでくれました。私は今年二十歳になったばかりで介護の経験もなく、まだまだ未熟者ではありますが、大好きな介護のことでこのようなすばらしい賞をいただいて、とてもうれしいです。
介護の現場では、毎日利用者様に笑顔にさせていただいています。今回の「大切な『おはぎ』」は、私の中でとてもインパクトのある思い出だったので、たくさんの人に介護の楽しさや、おもしろさが伝わるといいなと思います。
将来は社会福祉士と精神保健福祉士の資格を取得し、福祉の現場で働きたいと思っています。これからいろいろな経験を積み重ねて、生涯福祉にかかわっていきたいです。この度は本当にありがとうございました。
オレンジ大賞
「最後の時間」
森川 詩歌 さん
この度は、このような大変すばらしい賞をいただきまして、本当にありがとうございます。
今回のエピソードの祖父は、病気がわかってから半年ほどで逝ってしまったのですが、その祖父と連れ添っていた祖母は、祖父の病気がわかる2~3年ほど前から、10年以上認知症を患って一昨年亡くなりました。
母は、祖父だけでなく、その祖母の介護にも本当に献身的に携わっていました。先ほど選考委員の先生から、“昭和のよくできた女”というお褒めの言葉をいただいたのですが、娘の私からみて母は、ごくごく一般的で、どこにでもいる、本当に普通の母なので、だからこそ、その母が祖父母に心を寄せ、献身的に介護をする姿は、私の胸に迫るものがあり、それまでは遠いことであった「介護」というものが、ぐっと近くに迫ってきて、自分のこととなったきっかけになりました。
結婚をして子供もできた今だからこそ、こういう気持ちになれているのかなと思います。もっと若いころに祖父母が亡くなっていたら、こういう気持ちを感じなかったのかなと思うと、長生きしてくれた祖父母に、心から感謝したいと思います。
この賞は、母と半分ずつで受賞させていただいた賞だと思っています。母は「京都の川下り」に行きたいと言っていたので、母と2人だけで行ってきたいと思っています。本当にありがとうございました。
川名選考委員長より
コンテスト全体の講評
今回で第5回となりますが、集まった作品はこれまでになくバランスよく、とても楽しいエピソードが満載でした。
今回の作品を読んで、介護の仕事というのは、「家族関係を再構築できる最後のチャンスになる」ということや、介護はお節介や人の良さで誰でもできるということではなく、「距離のとり方」が非常に難しい仕事であり、また、「目の前のこと」に振り回されず、「相手が何を考えてこうしたのか?」を考えなければいけない仕事であると、一般の方々にわかっていただければと思いました。「介護は、きつい、汚い」と言われがちですが、それだけではないということを伝えたいと、今回の作品を読んであらためて思いました。
このコンテストは地道な啓発活動だと思いますが、毎回読ませていただくと、現場の方々の経験は日常生活の中にある見えない宝物のようでもあり、埋もれさせるのは本当にもったいないと思います。これから一、介護者として、また、当事者として介護に直面する方々の道しるべにもなっていくものとと思います。今から来年に向けてエピソードをためて、埋もれさせたくない宝を掘り起こしてください。また、書くという作業は自分の頭を整理する作業にもなり、かつ、記録としても残りますので、ぜひエピソードコンテストを盛り上げていただければと思っています。どうもありがとうございました。