第3回オレンジクロスシンポジウム
- 日時
- 2017年7月21日(金)14時~17時(14時~15時はエピソードコンテスト表彰式)
- 会場
- トラストシティカンファレンス京橋STUDIO2・3(京橋トラストタワー4F)
- 演者
- 暮らしの保健室 室長/マギーズ東京 センター長 秋山正子氏
- 演題
- 「つながる・ささえる・つくりだす在宅現場の地域包括ケア」
- 講演概要
- 日々の業務に追われる中でも、お互いに繋がりあう実感が得られる瞬間があります。そこから互いを支えあう地域との拡がり、そこから新しいものが作り上げられていくプロセスが見えます。始まりは、毎日の実践、利用者に向き合い、その家族、地域へと目を広げればそれが「地域包括ケア」につながります。
第1部 エピソードコンテスト表彰式
“ 看護・介護エピソードコンテスト”は、在宅ケアの現場で日々活躍されている方々にフォーカスし、“ 現場での思いを皆様と共有したい”との、財団設立者の強い思いにより始まりました。
3回目となる今年も素晴らしいエピソードを多くお寄せいただき、有難うございました。昨年5月25日に選考委員会を開催し、厳正なる選考の結果、大賞1編・優秀賞3編を選考いたしました。今回は更に、昨年度に引き続き選考委員3名の方々からの強い推薦により、選考委員特別賞1編が選考されました。7月21日の表彰式には、受賞者5名中4名の方々が出席され、表彰後に受賞スピーチをいただきました。ここでは、その受賞スピーチをご紹介いたします。
また、今回は受賞者全員で選考委員の秋山正子さんがセンター長を務めておられる“ マギーズ東京” を見学、その後、秋山さんを囲みながら意見交換を行ない、受賞者の皆様から、大変好評をいただきました(“ マギーズ東京” については、6ページの財団シンポジウムの記事をご覧ください)。
本コンテストでは受賞者に副賞として、大賞:30万円、優秀賞:10万円、選考委員特別賞:5万円が贈呈されました。なお、受賞作品は、看護・介護エピソードコンテストページに掲載しています。
選考委員特別賞
「むらかみさんでささえたい」
山﨑緋沙子様
北海道旭川市から参りました、山﨑です。
当法人の理事長 村上智彦先生は今年5月に亡くなられましたが、先生のご実家である村上内科小児科医院の外来看護師の面接を受けた時、初めて先生にお会いしました。その時に「自分が生まれ育った町でお世話になった人々の看護ができるって面白いと思わないかい」との言葉がとても印象に残り、この仕事に就きました。
その翌年、訪問介護ステーション「むらかみさん」の立ち上げを任され、自分が生まれ育った町で、祖父母やご近所や地域の方の訪問介護を開始しました。今回の投稿はその物語です。
先生から教わった“ 自分たちがお世話になった地域の人たちを看護する楽しさや喜び” と共に、まだ経験の浅いステーションとして日々困難に立ち向かい奮闘しています。私達だからできる“ 地域の人を支え、寄り添う看護” をこれからも模索して続けていきたいです。
素晴らしい賞をいただきまして、どうもありがとうございました。
優秀賞
「地域の一員として物申すばい!~ホームホスピスが我が家になった三婆物語~」
樋口千惠子様
九州の久留米でホームホスピスをやっており、全国では30か所ほどあります。“ 医療依存度の高い方を、地域の力を借りながら暮らしていくことができないか? ” その方の生活の延長線上にたまたま病気があって、家へ帰りたいけれども、なかなか家へ帰れない。そういう方の命をみんなで守ろうや、という活動をしています。
私どもは、「あんたがおってよかったばい。あんたに今日会えてよかった。私、本当に幸せだった。」と。そんな思いが刹那・刹那に沢山あることが、全体の免疫力を高めていく気がしております。
また、私どもでは、“ 学びの館たんがく楽館” を設置しています。ホームホスピスの中に地域交流室があり、そこで陶芸教室・ウクレレ教室・脳と体を健康にする教室など様々に行う場所です。そこで、ある認知症のおばあちゃんが陶芸教室で花を生ける花器を作られた。それをご覧になった地域の方が、「素敵ね。焼き上がるのが楽しみね。またお会いしましょうね。」と言っていただけた。年をとっても褒めてもらう機会や、また会いましょうねという機会を作って、結果“ あんたがおってよかったばい” と。こんな活動は私どもだけではできません。地域の力を借りながらみんなで命を支えていきたい。
九州においでになる機会がありましたら、ぜひ「たんがく」においでください。今日はどうもありがとうございました。
優秀賞
「熊本地震が残したもの」
谷冨明子様
熊本から来ました谷冨と申します。普段は居宅介護支援事業所で介護支援専門員として地域を走り回っています。このような賞をいただくことができて感謝しております。
早いもので熊本地震から一年が経ち、地震で一瞬にして普段の生活が激変しました。私も変わり果てた風景を見て、茫然としたことを覚えています。大切な人や物も失いました。しかし、今だから言えることですが、地震から得たものもあります。
ボランティアに行ったことで、O さんをはじめ普段の業務では会えないたくさんの方と会いました。話を聞き、時には怒鳴られ、一緒に泣き、悩みながら被災された方が、絶望感や痛み・悲しみから現状を受け入れ、前を向いていく様を見て“ 人は強いな” と感じました。
また、専門職として人の持っている力を引き出していく支援が必要であり、そのために本人と向き合い、寄り添い、時には一緒に悩んだりすることが大切であることを実感しました。私は人生の伴走者として、これからも介護支援専門員の仕事を続けていきたいと思います。
オレンジ大賞
「ほがらかに楽しくおらせてくれやの」
松村朋枝様
石川県の小松市から来ました松村と申します。
小松市で訪問介護ステーションややのいえにて、理学療法士として働いております。そこに住んでいる「正子おばあちゃん」を通して、3年前に亡くなった自分の母親も認知症になって「どのように思っていたのかな」という気持ちを書いてみました。
母親が亡くなって3年経っても、実は一度も泣けたことがありません。自分の中に後悔やモヤモヤしたものが残っていました。「それが何だろう?」というのがいま初めてよくわかった感じがします。いろいろ話をしたり、この文章を書いたりすることで、今回ようやく母親に対する自分自身のグリーフワークが終われた感じがしています。
自分が一番大切にしたいのは「その人の思い」です。聞き書きを通してその人となりを知り、「本当は何を思っているか」を大切にして、その人の本当にやりたいこと、やれることを一緒に考えて、安心できる居場所づくりを一緒にやりたいと思っています。
正子おばあちゃんからもらった課題「ほがらかに楽しくおらせてくれやの」というこれはとても重大な宿題です。それを心にとどめながら、いろんな人に寄り添っていけるように、今後も頑張っていこうと思います。
本日は素敵な賞をいただきまして、どうも皆様ありがとうございました。
川名選考委員長よりコンテスト全体の講評
全作品を読み、「これはいい」というのは選考委員も一致します。それに次ぐ作品は、委員の評価ポイントが異なることが多い。内容については、全体の印象で「地方の看護は強いな」と。東京に暮らす身としては本当に地方で介護を受けたい気持ちに毎回させられます。
書くということにはいろんな効果があり、頭の整理作業にもなります。ぜひ皆様、さらにチャレンジを!
このコンテストは、“ 現場で働いている方に光を当てたい”という思いから始めらています。皆さんがお持ちの経験や文化など、宝のようなものをぜひ他の方へ伝えて発信していただきたいと思います。
第2部 特別講演「つながる・ささえる・つくりだす 在宅現場の地域包括ケア」
[演者]
株式会社ケアーズ(白十字訪問看護ステーション)/暮らしの保健室室長/マギーズ東京センター長
秋山正子氏
第2部では、特別講演として「つながる・ささえる・つくりだす 在宅現場の地域包括ケア」というテーマで、秋山正子氏にお話しをいただきました。
秋山さんご自身の中で一番大事にしてきたのは、暮らしぶりを支えること。つまり、“ 暮らしの中で療養する人、家族を支えるケアを” という事。「医学モデル」ではなく、“ 暮らし”という言葉をキーワードにした「生活モデル」であるといいます。
生活する人を支えるために、「医療は最小限の介入にできたら」との思い、それこそが一番大事にされてきたことであるそうです。
また、なかなか広がらない在宅について、自ら情報発信すべく始めたものが“市民公開講座”であり、それを継続したことによる副産物が“暮らしの保健室”です。
そのほか、マギーズ東京についてもお話しいただきました。
こちらに掲載いたしました、『第3回シンポジウム「つながる・ささえる・つくりだす在宅現場の地域包括ケア」』の具体的な内容を含めました詳細につきましては、2018年3月ごろに、オレンジクロスホームページでの掲載と小冊子として発刊いたします。あわせまして、そちらもご覧ください。